日本が難破せぬかと見ておれず戦艦「石原」ついに船出す

橋本はかねての持論を訴えて自ら選挙に打って出るべし

妻は吾をバカ正直とみくびるが大臣になる人も居るのダ

自らの手で潔く幕を引くドジョウ宰相約束違えず

八十の老骨が維新の会に入るわれらが日本再生せんと

*白と黒混じりてグレーに変わりたり維新の会の魅力うすれる

お取り越しの経を唱えし若が云う「今年は三十三回忌ですね」

いくつかの党が離合をくり返しだんだん大きな惑星になる

嘉田党首は小沢を制しきれるのかそれとも利用されるだけなのか

新しき時代を拓く指導者が出でよと賀状に「祥鳳」と書く

子孫のため脱原発を願うなり目先の株価が上がることより

*ぷるぷると餅つき機の中こねているその成りゆきをじっと見つめる

寒き朝道に散らばる楠の実の黒きをプチプチ踏みつぶし行く

蒸気吐き孫と乗る汽車動き出す一瞬われは浦島になる

「すきま風」余興で唄えば先輩が寄り添い一緒に唄ってくれた

*ハウ・ドゥユドゥー話しかければワン公も吠え返すなりハウ・ドゥユドゥー

日銀の総裁替わればデフレ去る残る不安は改憲・原発

土曜日は息子が孫を連れて来てわが家で一日休んで帰る

ドングリにつまようじの先突き刺して回して遊ぶ孫と一緒に

凍てし朝軽く当てればホール抜け球コロコロと何処までも行く{グランドゴルフ}

いつまでも嫁がぬ娘をもつ親が雛ずしの出来ばえ競い合ってる

つつがなき景気回復願うなり梢を抜ける三月の風

阿部首相「インフレ二%」という呪文日に日に唱えて国を興さん

すしの素うちわでパタパタ炊きたてのご飯にまぜてハイ出来上がり

*焼津にてマグロ食べれば思い出す死の灰被りし第五福竜丸を

*柴又の駅で降りれば寅さんが帝釈天へ案内をする

仰ぎ見るスカイツリーの展望台これで岐阜城の高さあるのか

若き日に読みたる本に出でてこし不忍池にて漱石しのぶ

アメ横で鮭の切り身を四掛けに値切れば憤怒の顔が応える

*本物か贋物かを問う鑑定団テレビ見ながら夫婦で賭ける

若き娘が片手でスマホを繰りながら地下鉄つぎつぎ乗り換えて行く

橋本は本音の部分をよく言った誰もが体裁にこだわる中を

清流を千鳥橋にてUターンして帰りくるハーフマラソン

千鳥橋をトップで渡りしランナーは黒人選手のタデセであった

*店に入り腹を満たせば何処からかホトトギス鳴く「ヨククフキャクダ」

*薫風に踊りだしたる噴水が竜に身を変え空を舞うなり

*新調のシャツ着ていそいそ出かけゆく七夕の夜の親睦会へ

*宴会の最後を〆る河内節オバチャンたちが皆踊りだす

河内節おどり疲れて最後には三本締めでスカッと終る

どこまでもゴンドラリフトは上り行く栂の樹海をはるかに見下ろし

つぎつぎと白馬の峰に雲が湧き消え去りゆくを飽かず眺むる

Tシャツで浴衣姿の列に入り見まねで踊る七歳の孫

エノケンの面子を地面に打ちつけて遊びし昔を今の子知るや

上げるのか上げざるべきか消費税主婦たちの声に従うのが良し

友の死の次にくるのは我が身とぞカナカナが鳴き教えてくれる

驕る者久しくあらず東電は己の不始末拭うこともせず{政府が汚染水対策費用として血税投入}

*長生きをせんとて妻は豚肉を吾れはいわしの丸干しを食う

ジジババの足の衰え見透かして得意げに山道登る二年生

*キム・ヨンジャの「自分を棄てる」ということば心に刻んで舞台で唄う

貝月山あそこに見ゆるが頂上と幾度もだまされやっと着きたり

*冠山の頂きに立ち眺むれば四方八方蒼き山並み

ロープ取りターザンごっこで山肌を降りれば岩に脛打ちつける

外人に「オスキナフクハ…何デスカ」尋ねられてもわれ答え得ず{女郎花・尾花・桔梗・撫子・藤袴・葛・萩}

こちらから連絡とれずわが妻はいつも携帯オフにしている

玉堂の心に滲み入る山水画一点一点じっくりと見る

つぎつぎと新幹線ではこびくる寿しを競って孫と取り合う

「東名」の出口でバスのガス切れた皆で押して料金所を出る

*参拝の長い五分をパトカーが車の後ろで待っていてくれた

畑を鋤く手がホールインワン決めた負けじと意気込む団地に住むわれ

原発の運転再開の条件は都内で核のゴミ処理をすること{……県知事}

小泉よ首相に一矢「信なくば立たず」を知事選で見せつけてやれ

*宇治橋を渡れば白き鶏一羽首をふりふりあいさつにくる

若き日を省みるなり「人生に徒労はない」と人は言えども

建て前か本音で話すべきなのか蒸し返される慰安婦発言

おふくろに出会った気がするバスの旅年輩ガイドの滋味ある話しに

一つ一つ言葉を選んでとつとつと語る沙羅から伝わる素直さ

生徒には厳しく教えし校長が今日唄うのは「恍惚のブルース」

「ドカーン」としじまにポンハゼ爆ぜる音響いてきそうな路地に踏み入る

善良な一中学生が亡くなった悪貨が良貨を駆逐してゆく

酒蔵で利き酒試してつい三杯顔ほてらせてバスへ戻りぬ

総会を事なく終えて引き継ぎも済ませば心がリセットされる

何の意義ありやと自問す娘やら息子の嫁からもらうチョコレートに{バレンタインデーに}

*義理チョコと思えどいろいろ考えて頭を悩ますホワイトデーには

街中を松茸みこしがねり歩く外人女も口をあんぐり

二週間寝返り出来ず餅まきの人のうねりに脇腹痛めて{田県神社の餅まきにて}

無造作に収穫物を描きたる絵から今にもとび出す玉葱

小手毬のひと枝を庭より折りてきて玄関先の瓶に挿したり

*玄関の隅から佳き香を漂わすアメリカジャスミンの紫の花

*「メーン!」相手の頭へ突き抜ける声を発して飛び込む剣士

「カジノ」なる名で復活か宗春の遊興施策が眠りから覚め

*今までの百曲りの道は厳しいと七曲りから行く今年のハイクは

今分かるイソップ話の「狐と鶴」老人夫婦の食べ物のことだと

場所を尋ね「行けば分かる」と返事くるときに限ってなかなか分からず

*渡り来し三光鳥をとらえんと大砲レンズが放列を敷く

風抜ける尾根すじ行けばウグイスとホトトギスとが交替で啼く

鳥たちにブルーベリーの実を食われ楽しみにしていたジャムを作れず

むらさきに開きて佳き香を放ちつつ白くなる花ニオイバンマツリ

遼一よ何でもよいから好きな事ひとつ続けて一番になれ

涙なくテレビ見られずモンゴルのへき地に独り働く日本人を

とりどりの紅のあふれる薔薇園で黄色いバラが微笑んでくる

*渾身の意気込めうなる河内ぶし中村美津子に負けるものかと

*「聞くなかれ」「語るなかれ」という掟諾えるなり湯殿に入れば{湯殿山}

爺杉に耳を押しあて聞いてみる如何に千年生きてきたかと{羽黒山}

対向車なきことひたすら願いつつバス上りゆく月山八合目へ

*霧のなか木道(もくどう)行けばあちこちにニッコウキスゲが明るく灯る{月山・弥陀ヶ原}

歯が抜けるごとく淋しき同窓会今日一人また天国へ発つ

ぬかりなく準備して待つ台風はしばしば他へ遠回りする

何処までも紺碧の海白い波志気湧き出づる桂浜なり

*目の前で炎の中から取り出した藁焼き鰹のたたき香ばし

渡橋料は帰らずと言われ後へ引けず決死の覚悟で渡る「かずら橋」

お茶一杯飲むためだけに何度でも足はこびたき掬月亭なり

金刀比羅の書院の襖に愛らしく描かれている「水呑みの虎」{丸山応挙画}

*茹で上がる十分間は長けれど満ち足りて出る名代のうどん屋{高松駅近くにて}

遅くまで明か明か灯る小学校体育館では何をしている

鶏肉の苦手なわれも箸すすむ八丁味噌の鍋で食べれば

*冷え込みて朝起きるとき腰伸びずフラフープのごと腰回しみる

 ~ つれづれ短歌(そ の二) ~

     “鵜の目”のつぶやき