六 月 例 会 (第五百八十六回)
                (令和元年六月十三日)

自分では真正の言葉も娘には呆け映るか自信遠のく(鈴木光男)

意にそむき遠くへ転がる球を追い大声出してグランド駆ける(鈴木寿美子)

今日もまた島を出る子へ爺祈るアサギマダラを忘れないでと(長瀬武司)

末の娘の家から望むロッキーは我が家の西方伊吹と似てる(大西富士夫)

老いた母施設で暮らし増えたのは忘れることと歳が五つも(土井信雄)

帰省の娘に「鰻を食べに行こうか」と誘えば「まずは」としゃべくり始む(熊崎佐千子)

親も子も長く生きれば倖せか案じて生きる令和の行くえ(鈴木芙美子)

内戦に後押しをする国ありて民は渦中の中逃げまどう(古田司馬男)

アシタバが八丈島からやって来て岐阜の冬越え食卓かざる(川島綾子)

信長がツブラジイ見て名づけおや「稲葉やまより金のはなだよ」(山田テル子)

妻亡きあと病に倒れし弟はさぞや淋しい日々だっただろう(丸山節子)

「令和元年」夢も希望も更になしバラ園見つつ孤独身にしむ(久野高子)(鈴木光男)

新緑と大樹際立つ山裾の心地良き風ウオーキングする(小椋勝宏)

ときめきて見し青春ははるかなり青い山脈雪割桜(河野かなゑ)

独り居の静けさテレビでまぎらわす百まで生きると言いし夫いずこ(安田武子)

「てっぺんでラジオ体操してきたよ」朝早いのに下山の人あり(井上秀夫)