ざわめきも一気に鎮まるカラオケの演歌のさ中に詩吟がひびきて(井上秀夫)
平和主義正しいことは分かるけど力無しでは通れぬ世界(古田司馬男)
死して来ぬ金婚に買う白キキョウ「赤足しましょか」店員が言う(熊崎佐千子)
岐阜県は県境を七件に囲まれてそれぞれの町どんな暮らしを(川島綾子)
東京へデモに行ったよ若き日は今は子頼りスーパーまでも(鈴木芙美子)
ヨチヨチと幼子歩くその後を笑みながら追う杖をつく人(鈴木芙美子)
夕暮れの鐘の音響く坂道を大根さげて坊さんがゆく(長瀬武司)(鈴木芙美子)
孫娘青い目の娘等に浴衣着せ嬉しかったと写メール届く(山田テル子)
若き日の旅情あふれし千曲川悪魔となりてあばれてをりぬ(鈴木寿美子)
がむしゃらにただゆきて子育てに会えば花咲く同年夫婦(小椋勝宏)
三年前四十六名の会員もいまや二十八名グランドゴルフは(鈴木光男)
虫さされ手の甲赤くはれあがる 金木犀の香に誘われて(久野高子)
油絵のまっかな赤が誇らしげ緑いキャンバス曼珠沙華燃ゆ(三宅利枝)
十月半ばまだまだ暑く扇風機新しくしたればとたんに寒し(丸山節子)
腑甲斐ない国産力士もう一度国技の重み噛みしめてくれ(大西富士夫)
年とれば車の運転無理という移動の手段如何にしようか(河野かなゑ)