三 月 例 会 (第五百八十三回)
         (平成三十一年三月十四日)

年号は移りてゆくが忠恕なる皇室精神つづいてほし い(井上秀夫)

出棺で頬に手を添え別れたる夫の姿が心に残る(古田司馬男)

わが友は病に伏して侘しかり 急ぐがごとく逝きてなお更(土井信雄)

大判の海老せんべいをパリパリと食べた思い出幼き日々よ(山田テル子)

倣うこと大きらいなるこの孫は恵方を背にし大巻喰らう(熊崎佐千子)

わが友は妻の介護を今解かれ残る余生を思うまま生く(小椋勝宏)

セールスマン言葉巧みに誘い込む迂闊に乗れば支払いの増す(川島綾子)

活力に満ちたひまごらこの先の人生にいかなる試練が待つか(鈴木光男)

束の間でも留めおきたい行く春をやがて若芽も青々繁る(大西富士夫)

川沿いに染井吉野は咲き初めてトンネルとなる歳月を経て(長瀬武司)

エアコンの風に疲れしクチナシをごめんネといい短く切りぬ(鈴木芙美子)

朝日うけ色とりどりのランドセル「行ってらっしゃい」七年過ぎぬ(安田武子)

弟は最後にはっきり「お姉さんお姉さん」と云って旅立ちゆきぬ(丸山節子)

舌ガンを受け入れ生きる堀ちえみテレビに向かいてエールを送る(河野かなゑ)

めでたくない九十過ぎの誕生日ケーキもありてデイの施設は(久野高子)

サックスのカルテット奏者全員がB型と聞き会場どよめく(鈴木寿美子)