一 月 例 会 (第五百八十一回)
        (平成三十一年一月十日)

坂道に老犬を引く子の有りて年を感じる吾と重ねる(長瀬武司)

夫宛の郵便物が来なくなり居場所決めたか黄泉の世界に(河野かなゑ)

わが家に金が無き事見透かされいまだ無縁のオレオレ詐欺は(土井信雄)

それぞれの自分語りのティータイム取りつ取られつ話題が動く(熊崎佐千子)

どよめきぬ米寿と喜寿がデュエットで「…ふたりは不倫草」と唄えば(井上秀夫)

賀状来る老老介護の主夫だとか富士の雪晴れ心を写す(古田司馬男)

地産品送りし返礼都会からおしゃれなスカーフ我身を彩る(川島綾子)

誰となく「頑張ってるね」と歌作りペン執る思い軽くなる時(小椋勝宏)

離れ住む娘の老後を案じおりわれの余生も短かくなりて(鈴木芙美子)

スマートフォンに夢中になりつつ運転の危険連なる朝の通勤時(安田武子)

居る筈の席に人なく月おくる空しさつのり退院の日待つ(大西富士夫)

食事する?何が食べたい?主夫われに「何でもいい」は何とむずかし(鈴木光男)

長生きはのぞんでいないと言いつつも除夜の鐘聞き無事を願えり(久野高子)

陛下とは三日違いの誕生日弟は今こんこんと眠る(丸山節子)

もういくつ寝ると正月それまでに風邪の神をば追い出さんとす(佐野きく子)

ゆきがふる四代揃って初詣幸せを謝し平和を祈る(山田テル子)

ずっしりと重く不気味な物体よ麻酔の効きしわれの手と指(鈴木寿美子)