十 ニ 月 例 会 (第五百八十回)
        (平成三十年十ニ月十三日)

振り返る一年間の詠草を歩き乍らに自と呻く(長瀬武司)

「ま っ赤よりふじ色のドレスがよく似あう」話しかければ笑顔にうなずく(井上秀夫)

連れ立ちて旅にも行きし友なれどそれぞれひとりの旅に向いぬ(鈴木芙美子)

埋もるる社殿に掲ぐる貫之を坐して読み居る飛騨の金秋(熊崎佐千子)

孫娘の二人の子らはべったりだ母しらぬわれは眩しく見ている(鈴木光男)

あざやかな皇帝ダリアの紫は初冬の公園やさしく飾る(鈴木寿美子)

古希となり悟り一つも開けぬを酒でこの身を慰める夜(土井信雄)

ホトトギス初夏に鋭く鳴いたのに同じ名前で秋を彩る(大西富士夫)

外国人の就労支援一人一千万円ならば第二子以降の家庭へ支援(古田司馬男)

断捨離は師走なかばの十四日もうゆずれない思い切り捨てる(山田テル子)

孫娘私に逢いに東都から聞き返しにもいやな顔せず(川島綾子)

御堂筋イチョウ並木は今はどうふと思いだし指折りかぞえる(小椋勝宏)

ブロック塀大きな音立てこわされる児ら通り過ぎ木枯し吹きぬ(久野高子)

じゅず玉のお手玉振ればカシャカシャと幼き日々がよみがえりくる(河野かなゑ)

数人で毎月集いしつくし会次々みまかりこの秋わびし(丸山節子)

晴れ渡る師走の空を眺めつつ憂き事多かりし年振り返る(佐野きく子)

殺生は八十路のわれには辛いけど詫びつつひとふき殺虫剤まく(安田武子)