十 一 月 例 会 (第五百七十九回)
        (平成三十年十一月八日)

六百人祝賀の会で黙祷し豪雨被害の人人悼む(長瀬武司)

花柚子を二つに割って湯をそそぎ甘みを入れてゴクゴクと飲む(井上秀夫)

満月は二十五日出でもせでザンザザ雨が闇をたたけり(熊崎佐千子)

新築の杉と桧のよき香りやがて住むべき家主が継がん(古田司馬男)

そそくさと小鳥来て去る隣の庭覗き見ながら短日暮れぬ(小椋勝宏)

コレラ死の猪のニュースの地に住みて栗山に入れば猪に恟恟(川島綾子)

秋の夜は虫の音だけで淋しいねイビキの伴奏あれは去年までか(山田テル子)

電話にて幼なじみの声聞けばすでに心はふる里の村(土井信雄)

覚束ない日本語喋る孫娘飛騨で職得て頑張っている(大西富士夫)

平成の年号やがて終わりとなり三代を生きる我等戦前派(大西富士夫)

ボランティアは自分のためと心から思えることを喜びとする(鈴木芙美子)

天然のしめじを入れてご飯をたく忘れられないあのおいしさは(丸山節子)

探しいて鏡の前に立ちどまり首にかけたるめがね見つける(久野高子)

またぞろと乾燥肌が疼きだす掻きすぎ禁止ぞ冬のともだち(鈴木光男)

対面の座席の女性もくもくと鏡片手に顔つくりゆく(鈴木寿美子)

万松館の敬老会に招かれぬ九十年を生き永らへて(佐野きく子)

もも色の波の上飛ぶあきあかねコスモスの群れ眺めて飽きず(安田武子)