四 月 例 会 (第五百七十二回)
     (平成三十年四月十二日)

カーテンの模様の星を打ち貫きし月の剣の白じろとあり(熊崎佐千子)

肺ガンを切るか切らぬか決めるのが大変つらい患者本人(井上秀夫)

旅に発つ夫に六文銭持たせたり無事にあの世に着いただろうか(河野かなゑ)

わが息子わずか二十才南方で散りしと詠める句碑を見て立つ(小椋勝宏)

無人店高値のみかん四五割も連日盗られ店出し止める(川島綾子)

人々に刃向かうことの無いカラス控え目のさま時に可愛く(古田司馬男)

念願の電子辞書を求めたり最新型もメイドインチャイナ(鈴木光男)

対立も諍いも今昇華して平昌の地に聖火の灯る(鈴木寿美子)

風邪を引き暫く経ちて庭へ出た妻が知らせる混み合う開花(長瀬武司)

忌み嫌うカラスの声は高々と夜明け前から恋を語らう(大西富士夫)

卒業生手作りみこしに我が師をのせて感謝の笑顔画面に輝く(安田武子)

美しく桜は咲けど汚染水 汚染の土の行方は見えず(鈴木芙美子)

夫植えし侘助の花眺めつつ曾孫の誕生夫に報告(久野高子)

とほき日の祖父の手の跡ながめいる大龍寺にて奥の院まで(佐野きく子)

白蛇が近づいてくる叫べども誰も気づかず手術室のなか(丸山節子)

トサミズキ今年も咲いて満開に庭が明るくはなやかに見ゆ(福田時子)

春彼岸寄り集まってお参りすむかし昔に皆感謝して(山田テル子)