三 月 例 会 (第五百七十一回)
      (平成三十年三月八日)

白根山噴火の報に確かめるかって歩きし白根山かと(鈴木寿美子)

外は雪一輪ざしのロウバイが匂えり部屋へ春招き入れ(大西富士夫)

闘病の苦しさ逃れ穏やかに逝きたる夫の顔に安らぐ(河野かなゑ)

おんどりの声聞きながら老い一人元気を貰い春耕に立つ(長瀬武司)

軒先のつなぎ団子に灯の入りてざざめく前の路地照らしおり(熊崎佐千子)

腰痛の二次災害かお岩さん早く来いこい私のはるよ(山田テル子)

娘に貰う話してうたう縫い包みおねだり問い掛け対話を誘う(川島綾子)

矢のごとく時はすぎゆく一段と老朽車なりのギアーをあげて(鈴木光男)

「せんせい!」と可愛く唄う還暦を過ぎたる女がセーラー服で(井上秀夫)

生き方は人それぞれの心意気八十の友 今も現役(古田司馬男)

紅に白混じる山茶花手にふれてさらさらさらっと立春の雪(安田武子)

天空の伊吹鈴鹿に霞む雲越すには越せぬわれまだ麓(小椋勝宏)

離れ住む一人娘を突然に亡くせし友あり人ごとでなし(鈴木芙美子)

雪空を見上げ出発したる子のインドネシアは暑いとの電話(佐野きく子)

べにいろの侘助いける厨べにくらい気分も少し明るく(久野高子)