一 月 例 会 (第五百六十九回)
     (平成三十年一月十一日)

外は雨手綱を取ればポチうめく「今朝ノ散歩ハカンベンシテクレ」(井上秀夫)

医者に見せ長く連れ添う臀部の粒取り除かれて晴れて空見る(小椋勝宏)

しばし待て腹の立つ時五分間今はテレビで五秒待てばと(川島綾子)

夕方の五時の時報は一人居の淋しき夜の始まる合図(河野かなゑ)

温くなり妻と旅先話し合うすんなり決まる春の高山(長瀬武司)

どんくさい見切りをつけて手放した株が高値で市場を歩く(古田司馬男)

山茶花が白粉うっすらつけている霜ふる朝の美容のひと時(安田武子)

友ら来るポットラックのパーティに暖房角煮花そえてよし(熊崎佐千子)

霊仙と伊吹が挟む関ヶ原 男依 三成歴史を残す(大西富士夫)

日記みて去年の今頃風邪だったすっかり忘れて又も風邪ひく(鈴木芙美子)

咲くもよし庭の山茶花紅の花散るも又よし花びら拾う(福田時子)

「北」の文字ミサイル発射木造船 年賀状書く手のふるえくる(久野高子)

仔いのししころげ落ち来し山峡の子らの住居に伴はれてゆく(佐野きく子)

行って来ます 転ばんように ありがとう 今日はどうした返事がないね(山田テル子)

老人の病院通いのうしろかげ寂しすぎます百歳時代(鈴木光男)

「開戦前夜」突飛な言葉でなくなりぬ われは平和を祈るほかなし(鈴木寿美子)