外は雨手綱を取ればポチうめく「今朝ノ散歩ハカンベンシテクレ」(井上秀夫)
医者に見せ長く連れ添う臀部の粒取り除かれて晴れて空見る(小椋勝宏)
しばし待て腹の立つ時五分間今はテレビで五秒待てばと(川島綾子)
夕方の五時の時報は一人居の淋しき夜の始まる合図(河野かなゑ)
温くなり妻と旅先話し合うすんなり決まる春の高山(長瀬武司)
どんくさい見切りをつけて手放した株が高値で市場を歩く(古田司馬男)
山茶花が白粉うっすらつけている霜ふる朝の美容のひと時(安田武子)
友ら来るポットラックのパーティに暖房角煮花そえてよし(熊崎佐千子)
霊仙と伊吹が挟む関ヶ原 男依 三成歴史を残す(大西富士夫)
日記みて去年の今頃風邪だったすっかり忘れて又も風邪ひく(鈴木芙美子)
咲くもよし庭の山茶花紅の花散るも又よし花びら拾う(福田時子)
「北」の文字ミサイル発射木造船 年賀状書く手のふるえくる(久野高子)
仔いのししころげ落ち来し山峡の子らの住居に伴はれてゆく(佐野きく子)
行って来ます 転ばんように ありがとう 今日はどうした返事がないね(山田テル子)
老人の病院通いのうしろかげ寂しすぎます百歳時代(鈴木光男)