十 二 月 例 会 (第五百六十八回)
           (平成二十九年十二月十四日)

歳々に山裾の紅葉美しく観光地に住む私の自慢(鈴木芙美子)

剪定の終りし庭が山並と夕焼空を借景として映ゆ(川島綾子)

カラス語がいろいろあるらし安全や危険や食べ物あると知らせる(古田司馬男)

山の家窓にはりつくカメムシをそっとつまみて放てり友は(熊崎佐千子)

コケコッコーこの町中で聞けるとはとおき田舎を思い出させる(小椋勝宏)

軒先へ百舌が一声秋運ぶ今年も越せそう卆寿への道(大西富士夫)

人工雪さらさらさらと積まれゆく開場間近な石徹白スキー場(鈴木寿美子)

「九十歳何がめでたい」吾も思う肯定すれど病院通い」(久野高子)

立冬を過ぎるとそろそろ天日干し在所の義弟大根もちくる(鈴木光男)

庭のすみに咲くツワブキの花は黄あざやかに咲く冷えこむ日々を(福田時子)

あなたならうまく出来るとおだてられその気になって背すじをのばす(山田テル子)

喜寿となり懐かしき日を思いつつ今日もまた来ぬ育ちし村に(長瀬武司)

秋風に素直になびく白い波写生持て余しすすきに見入る(安田武子)

急の寒さにせきたてられるこの頃は師走の用事早くすませと(丸山節子)

つれあひとひんここ見しは遥かなり美濃の大矢田の秋の好日(佐野きく子)

ほんとうの親心なり薬にて勾留中の子の保釈せず(井上秀夫)