十 一 月 例 会 (第五百六十八回)
                 (平成二十九年十一月九日)

虫の音のとぎれとぎれを聞きながら赤いセーターふうわりはおる(熊崎佐千子)

久久に屑松茸で飯を炊く愚直な我が家国産がいい(長瀬武司)

聞き馴れぬ睡眠負債という言葉私の睡眠負債が心配(川島綾子)

食欲もなくなり入院するという友を励ます言葉を探す(鈴木芙美子)

実る秋ときを惜しまずコトコトと自然の恵み私も出番(山田テル子)

犬の糞垂れ流しには負けました自分の不覚か靴底洗う(古田司馬男)

その昔五の池傍でテント泊今年もめぐる悲劇の御岳(大西富士夫)

台風にあおられぬよう養生すわが庭に咲くコスモス愛しく(井上秀夫)

和紙の里あかりアートに灯がともる何度も来たっけ元気な夫と(河野かなゑ)

木洩れ日の形色々身にまとい逝きし息子と歩く秋の公園(安田武子)

「おめでとう」孫から花籠送りくる病に耐えて生きいるわれに(久野高子)

大型の季節はづれの台風の映像と選挙こたつに見いる(丸山節子)

野良の仔を拾い育てて十八年黒猫老いて白毛の目立つ(佐野きく子)

いままさに望む政治は誠実であたり前なるぶれない政治だ(鈴木光男)

衰えし日々の憂いを忘れんと飲み唄いたり湯の山の夜(鈴木寿美子)

まだ取れぬ五体の疲れ運動会の準備に出しゃばりすぎた(小椋勝宏)