十 月 例 会 (第五百六十六回)
                 (平成二十九年十月十二日)

電話来て六十代の女性また医療費還付金詐欺に遭ふ(長瀬武司)

女性には禿がいないと言われても遺伝情報個個が持つもの(古田司馬男)

一線を越えてるのかと記者が問う朝の茶の間のテレビの品格(井上秀夫)

捨て難き気に入りの皿亡き夫と幾年経たる思い出語る(川島綾子)

下り鮎食べんとすればわれを見る鮎のまなこに箸は止まりぬ(熊崎佐千子)

われの活気意欲を何が持ち去りし「酉」七度目が現実的に(安田武子)

楽しいねむかし杵柄独楽まわしよく見ておけと孫に教える(小椋勝宏)

入院の孤独に耐えて半ヶ月お彼岸花の赤にも逢えず(大西富士夫)

病室に母を残して通いし日々バス停みるたび思い出しおり(鈴木芙美子)

みどりごをじっと見詰める孫娘これぞ母親われ母を知らず(鈴木光男)

意に染まぬ者はバッサリと切り捨てる戦前国家に戻りゆく気配(鈴木寿美子)

来年もこの半袖を着てほしい病む夫のシャツプレスしている(河野かなゑ)

早朝に墓参りに行き風もなく彼岸花の満開が見ゆ(福田時子)

亡き夫の知らない孫やひまごらに祝ってもらう米寿のわれは(丸山節子)

優雅なるバイオリンの演奏に酔いしれて生きる励みになりぬ(久野高子)

敬老の集ひに行かずカラオケの迎へを待てりうきうきとして(佐野きく子)

移りゆく季を知らせし彼岸花夫の看とりに一途だった日日(小原千津子)

クラス会欠席しますなさけなや杖ついてでも行きたいけれど(山田テル子)