九 月 例 会 (第五百六十五回)
                 (平成二十九年九月十四日)

通るたび暗き窓口人はなく電車改札わが時刻表(小椋勝宏)

スーパーで丸くなったねと友より来久しぶりに会い病気の話(川島綾子)

文芸祭近隣各市へ種を蒔く花の咲く日が楽しみである(古田司馬男)

夕ぐれの庭にゆらゆらつり下がるフウセンカズラの緑の風船(熊崎佐千子)

山麓の墓に眠れる人あまた中には我より若き人も還らず(河野かなゑ)

蝉の鳴く原爆の日のいく度か核廃絶を願いて老いぬ(鈴木芙美子)

近ごろは外国人が目に付いて飛騨の高山さるぼぼ人気(長瀬武司)

線状降水帯なる聞きなれぬ言葉に惑う梅雨の列島(大西富士夫)

むせかえる強き香りをを放つなりカサブランカの花咲きそろい(井上秀夫)

爽やかな青空少ないこの夏は北にどんより黒き雲わく(安田武子)

いくつもの坂を越えて卒寿なり今は幸を感じるこのごろ(福田時子)

子の住まふ郡上大和を尋ね来ぬ山峡深く水すがしかり(佐野きく子)

売り言葉には買い言葉にてその果てはどうなることか 終戦記念日(久野高子)

盆過ぎてすがしき庭にまた一つ白い朝顔姉のおもかげ(山田テル子)

とぼとぼとシルバーカー押し医者通いそれでもよいか一人で行ける(丸山節子)

若き日の独身寮のMさんはラジオ大好き 四人部屋だった(鈴木光男)

咲き並ぶ百日紅の色あかあかと万緑のなか夏を色どる(鈴木寿美子)

残暑の日々コスモスの花咲きました蝉の声次第に小さくなりて(小原千津子)