たらたらと汗流しつつ田草取る母思い出す私喜寿です(長瀬武司)
そっと来て用足す猫に鞭くれよわが庭まもる「龍のひげ」なら(井上秀夫)
死語となる男子に勝る女子はなし女は度胸男は愛嬌(古田司馬男)
天空の散歩道なる春日谷霧立ちのぼる茶畑にひとり(大西富士夫)
美しい早苗田眺め学徒の日田植えしたこと思い出される(丸山節子)
早乙女の手借りなくても青春と田植え終わりし広き田眩し(安田武子)
東京の娘に会いに行くつもりだんだん延びて青葉の季節(鈴木芙美子)
み社の賀寿のまつりに招かれて長良川の鮎粥いただく(佐野きく子)
初夏の陽につつまれコースの堀池でカラスが水浴びここちよさそう(鈴木光男)
病む母の手を取りし子は五十路でも息子も照れるはじめてのこと(山田テル子)
早朝にミサイル発射とテロ事件ふいの轟音に耳をふさぎぬ(久野高子)
Aちゃんと私の関係従妹違い初めて知ってもやもや消えたり(川島綾子)
身をつくし大義のために主を諫む重臣のいた江戸時代には(鈴木寿美子)
もの忘れ茶飲み茶碗思いつつ二階の部屋に明日は忘れじ(小椋勝宏)
亡き夫の植えしあじさい花ざかり墓前に供え友にも配る(小原千津子)