六 月 例 会 (第五百六十三回)
                   (平成二十九年六月八日)

ひたすらに抹茶茶碗を作る人山ふところで夏の夜に焼く(長瀬武司)

将棋さす仲間の顔をうかべつつ羽生善治の入門書読む(佐野きく子)

山づとの赤いっぱいのつつじ抱き長ぐつ姿の友が来りぬ(熊崎佐千子)

金華山椎ノ若葉の盛り上り静かに沈む三重の塔(鈴木芙美子)

詐欺師来て話に乗らぬはよかったが疑心身につき失礼もあらん(川島綾子)

たっぷりと畑をぬらす雨ほしいなすときゅうりが青空睨む(古田司馬男)

家建てた時に笑った階段の手摺に今はつかまり下りる(井上秀夫)

月日過ぎ小さくなったランドセル大きくなったねもう六年生(安田武子)

妻施設夫は病院夜な夜なを妻を探して呼ぶ声哀し(河野かなゑ)

久々の晴れ間のぞいた山の道雨具持たないザックも軽い(大西富士夫)

今年もミカンの花が咲き満開の香り実の秋が楽しみ(福田時子)

オービーのゴルフ大会案内にトロフィー重く君は輝く(山田テル子)

さやえんどう蕗に筍春野菜一杯いただき食べる幸せ(丸山節子)

めじろ追い川えび捕りしふるさとは歩けるうちにとよぶもうごけず(鈴木光男)

おめでたいニュース茶席に広がりて抹茶たてつつ話はつきぬ(久野高子)

夏野菜トマトの苗も植えおえた待ちこがれし雨もっと降れ降れ(小原千津子)

「夜の歌」読みてさらなる満州の闇を知りたりねむれない夜(鈴木寿美子)