一   月   例   会    (第五百五十七回)
                (平成二十八年一月十二日)

幼な子を叱る母親の声聞こえ思ひ出しをり子育ての頃(佐野きく子)

黄昏の夕日に見入る彼の人に「誰そ彼」などと言ひたき晩秋(横山 稔)

たまさかにつわぶきの葉に桜花かと夜べの寒雨の山茶花散らしむ(熊崎佐千子)

わが家の庭行く時も飛び石を踏みはずさぬようそろりと歩く(川島綾子)

出征兵士を送りし家庭とかさなりぬスーダンに自衛隊送る家族に(鈴木寿美子)

青春の止まっていた時動き出すリズムに乗ってステップ踏めば(井上秀夫)

いまどきの卒寿の姉さま背をのばしグラウンドゴルフに声の明るし(鈴木光男)

GPSが裏門までも写し出す個人情報空から洩れる(古田司馬男)

カプセルに錠剤三粒と粉薬夫を支える食後の薬(河野かなゑ)

プレハブの家建ち若き人の影隣りは大きな家と老人(長瀬武司)

朝日さす揺れるカーテン爽やかなコーヒー香る茶店の中に(小椋勝宏)

親たちの知らぬ時代を生きて来て子に伝えたい感謝の心(鈴木芙美子)

刻々と明け待つ東の彩りが時を移して天柱となる(大西富士夫)

我が子抱く駆け付け警護の記事に泣く発砲するな九条守れ(安田武子)

久しぶり老人会の会合で昔話で楽しく過ごす(福田時子)

小春日に階段登り布団干す すぐに疲れる八十八歳(丸山節子)

賀状書く友も年々減りてゆく在りし日の友面輪の浮かぶ(小原千津子)

命日に仏壇なしで手を合わす母をしのんで鬼まん作り(山田テル子)