十   二   月   例   会    (第五百五十六回)
                (平成二十八年十二月八日)

ジグザグに単車駆り行く郵便夫主婦の自転車真っ直ぐ罷る(長瀬武司)

爆音で会話のニュアンス消し飛びぬ余りに無粋ジェットといふもの(横山 稔)

私にはシャネルがあります口紅が嫁の土産の小さな宝(川島綾子)

刈跡の田にひこばえの青々とまだ命あり米の成る草(河野かなゑ)

あらためて大和撫子ここにあり豊洲の地下を暴いた小池(井上秀夫)

スマホ手に親子連れだち祖父母らが青空のもと七五三参り(小椋勝宏)

手合いする孫の竹刀がふと止みて言い寄られたり「おぬしやるな」と(熊崎佐千子)

老いしわれ電報電話は緊急を知らすてだての思いはいまも(鈴木光男)

突然に金木犀のふあっとして私の悩み少しやわらぐ(鈴木寿美子)

みそ汁の試飲に並び待っている外人客も興味深げに(古田司馬男)

今年もピラカンサの実の赤い色陽に映え秋の深まり感ず(福田時子)

眠れない安定剤のめど眠れない戸をうつ木枯し春まだ遠い(久野高子)

三姉妹今は三婆ドウダンの赤あか燃える高山の旅(鈴木芙美子)

寺の庭背高く茂るけやきの樹ロープ繰りチェンソー唸る(安田武子)

御望山に霧降る朝の肌寒くドクターヘリが命を救う(大西富士夫)

年に一度湖畔の宿で再会を姉妹元気に会うのも気がかり(丸山節子)

うちのマル柴犬なのにインドアーワンとも云えず二人のお守り(山田テル子)

暮れ早く散歩の刻を日に五分早めて歩く紅葉見つつ(小原千津子)

長芋を朝餉にさくさく食み雄をれば山芋掘り来し父浮かび来ぬ(佐野きく子)