古代には歌のやりとり今「ラップ」時代は変われど行き交う心情(井上秀夫)
わが里のいちょう並木のどの木にも銀杏すずなり今にも落ちそう(鈴木光男)
覚へなき市名の多さに驚きぬ災害被害のニュース聞きゐて(鈴木寿美子)
股覗きいつもの景色新なり時に変えるかわれの見方も(横山 稔)
ひと夏の鵜飼を終えて川岸に舟は静かに眠りに入る(河野かなゑ)
忘れてもまた忘れてもわれひとり誰もとがめず前向き歩く(鈴木芙美子)
伊奈波さん気やすく呼んですみません何だかんだでつきあい永く(山田テル子)
わが庭で育て咲かせし菊の花墓に供えて父母と語りぬ(川島綾子)
コンサート余韻のこして外に出づ息子はライト合図に待てり(熊崎佐千子)
年末を迎えて一年を振り返る薬の増える日々の多かり(長瀬武司)
着陸の態勢に入りし銀翼と爆音迫り車上かすめる(古田司馬男)
ナツズイセン今年も土手に咲きました異常気象を構うことなく大西富士夫)
母と手を繋ぎスキップ女の子ゆらゆら熔け行く紅葉の木木に(安田武子)
病癒え二週間余りで戻りしが元のとおりの寂しき一人(久野高子)
休日のバスの本数すくなくて長く待つ身に木枯のふく(丸山節子)
久しぶり思い通りにならないがベストを仕上げる私のために(福田時子)
手話交す子らと並びて入館す杉原千畝の映像を見る(小原千津子)
連れ合ひとひんここ見しは十年前美濃の大矢田の紅葉の季(佐野きく子)