十   月   例   会    (第五百五十四回)
                (平成二十八年十月十三日)

リオ五輪どこの国旗か分からない一覧表で探すもわからず(川島綾子)

テレビより壁時計は遅れ打つ電池の力すぐそこ迄に(小椋勝宏)

週ニ回ゴミの袋を出す朝に二匹の猫は従きて歩めり(佐野きく子)

駄目ですよ君の老いぐさつまみ喰い時の流れを見たくなかった(山田テル子)

かぶりつく鮎の串焼きほろ苦し一瞬感ず秋の気配を(井上秀夫)

母を真似仏具のおみがきやっと終えほうずき灯りに夫を迎える(久野高子)

南西に下りし台風十号は那覇の東に勢力増しおり(鈴木光男)

衰えしわが身のうちで唯ひとつ髪は衰えず日々伸びてゆく(横山 稔)

少子化は計画出産のためだろう産めない事情の人らも多く(古田司馬男)

三十年生き余生といい難し夫亡きあとは第二の人生(鈴木芙美子)

噛み合わぬ話も明日は我が身かと友の話を聞き流している(河野かなゑ)

ストールを藍染めすればいや深くハワイの空をわれ忘れめや(熊崎佐千子)

倉敷の街並みテレビに見て偲ぶ修学旅行の友達の顔(長瀬武司)

軽快なバチのさばきの三味線のコーヒールンバのメロディーに湧く(鈴木寿美子)

笑い出す幼子お経の響く部屋十七回忌 母が恋しい(安田武子)

これと云うこともなさずに平凡に年重ねきて米寿となりぬ(丸山節子)

喧騒を極めた昼の野菜市一夜明ければつばめの天下(大西富士夫)

遠き日を思い出しおり小三のひ孫のビデオの運動会見て(小原千津子)

道端に咲き初めし萩縫う様にしじみ蝶二羽ひらひらと舞う(福田時子)