九   月   例   会    (第五百五十三回)
                (平成二十八年九月八日)

コマクサに白があると噂聞き探して歩いた
湯の丸の山(上信国境)(大西富士夫)

出席の捺印が増え幼らと体操に出る「新しき朝」(横山 稔)

つるつるっと背を流れるひと滴ラジオ体操今朝も終りぬ(安田武子)

この夕べ稲穂見わたすかかし君これから寝ると目をつぶるかな(小椋勝宏)

下町のカラオケ茶屋にスレンダーな大島紬の美人あらわる(井上秀夫)

ゆくゆくの君の旅路を案じつつ爺の拵えた肉の弁当(長瀬武司)

病弱の母を支うと職やめし君の携帯まだつながらず(鈴木芙美子)

ウリ類が異常高温に腐りだす育てし苦労徒労になりぬ(川島綾子)

さびしさも苦しき事も忘れさす漢字パズルはわれらのオアシス(鈴木寿美子)

憎き蚊を落としてティッシュに潰す時われのサディズム満たされている(古田司馬男)

真夏でもあの根棚は寒かった海辺の洞窟 遠きふるさと(鈴木光男)

「玉音」とは意味もわからず疎開地で蝉しぐれ聞く暑い日だった(久野高子)

夏あざみ侍らせ君はおくつきに新盆の日の我を待ちおり(熊崎佐千子)

盆休み孫が帰省し幼き日の話がはずむ夕飯楽し(福田時子)

おっととと避けられなくて水溜りぬれたる足に八十路をうらむ(山田テル子)

暑いからもう年だからとなまけぐせテレビは映すシンクロの娘ら(丸山節子)

とほき日の神崎川に川鱒と泳ぎし少女は米寿むかへぬ(佐野きく子)

東京のオリンピックをもしかして見られるのではと思ったりする(河野かなゑ)

暑さに耐えオリンピックに癒されて夕べこおろぎの初音ききおり(小原千津子)