新聞紙束ねつつふと思い付き加齢の早さと思い重ねる(長瀬武司)
この人のアルコール依存症治らぬか立ち話にも酒を匂わす(古田司馬男)
「北野北」標識のある街通り北野たけしがここに来たのか(横山 稔)
捨て難く仕舞込んだ下駄を出す歯の減り具合を懐かしく見る(川島綾子)
ともかくも何はともあれいよいよに参院選なり 重き一票(鈴木光男)
七十歳過ぎた女が流し目で唄うは「二時間だけのルージュ」(井上秀夫)
スーパーのチラシを見たと安売りを教える息子とス―パーへ行く(鈴木芙美子)
肯定も否定もせずに舛添さん都知事の椅子はそんなにいいのか(河野かなゑ)
またしても花火のような美辞麗句並べて民に期待持たせり(鈴木寿美子)
この年で啄木の歌すらすらとひとつやふたつは暗唱できる(小椋勝宏)
鈴生りの赤黄オレンジさくらんぼぽいぽい含めば笑みが零れる(安田武子)
爽やかに朝風にゆれるひるがおの花が咲いているピンクがきれい(福田時子)
ビル映す小さき稲田にカエル住む深き緑の昔を思う(熊崎佐千子)
米寿いま思い出しおり学徒にて戦闘機の翼鋲打ちしたり(佐野きく子)
「EU離脱」予想を越えた結果にて株価の動きいよいよねむれぬ(久野高子)
紫陽花の彩に魅せられ立ち止まり思わず拝む道三の塚(小原千津子)
イギリスに日本の企業二千社もあることを知る「離脱さわぎ」に(丸山節子)
片言の日本語喋る孫娘 言葉の壁を血縁で越す(大西富士夫)