六   月   例   会    (第五百五十回)
                (平成二十八年六月九日)

ハーブとか薬膳草を育ててる君は効能すらすらと言う(古田司馬男)

ダークダックスの世界民謡・山の歌青春甦へる外は雨音(鈴木寿美子)

「いいねいいね歯茎がきれい体調よし」歯医者は今日もわれを持ち上ぐ(鈴木光男)

草を刈る傾斜の土手はいと難儀山羊を放ちて農夫にんまり(長瀬武司)

傘寿来て二十九本歯を保ち八〇二〇目差したおかげ(川島綾子)

子のくれし芍薬の蕾ひとつづつ開きてわれに笑みかけてくる(鈴木芙美子)

核開発、オバマ大統領広島へ世界の平和を望むのみわれも(久野高子)

迷う吾の影を写せる水溜り二度と描けない一時の絵か(安田武子)

骨折し一人暮しは無理なので娘の住む町東京へ行く(丸山節子)

懸賞金両手でかかえ持って行く出稼ぎ力士へ諦めのみか(大西富士夫)

高速道走れば茶畑広がりて緑の短冊山も畑も(河野かなゑ)

ご免なさい手土産なしで下の段八十路にあまえおまいりだけ(山田テル子)

特養に夫婦で入っている友をおもいてめぐりを日課に歩く(小原千津子)

こんなにも小さく白く咲くものかミカンの花の香りやさしい(福田時子)

濃尾震災にその母亡くししわが祖母は数へ十六の時と語りき(佐野きく子)

薬湯の袋かき寄せ目を閉じぬことの葉いらぬこのひとときに(横山 稔)

水張田を反転しては往き来するツバメに一日の朝が始まる(井上秀夫)