ヨガの師が実技で見せる姿態にはなまめかしさも漂っている(古田司馬男)
かずかずの挫折の中から這い上がり生き延びたるは継母の賜物(鈴木光男)
骨のあるニュースキャスター次々と降板される春愁意なり(鈴木寿美子)
湯上りに大広間で聞く弾き語り森山良子の「さとうきび畑」(井上秀夫)
無人店百円売りの売り上げが今日はぴったり思わず拝む(川島綾子)
水仙へ顔を近付け香嗅ぐ妻の仕事を恋しく思う(長瀬武司)
閏の日は日記に字数の溢れたり潤う年を願ひて書きぬ(横山 稔)
咲き急ぐ梅にはらはら戻り雪若狭の湖岸春まだ浅し(大西富士夫)
帰り道たらの芽わらび採って来しその夫逝きて三十年の春(鈴木芙美子)
青空にくっきり華やか朱の鳥居御利益願う春の伏見で(安田武子)
風呂上りきれいさっぱり流す湯は暗闇の中に静かに消える(小椋勝宏)
トサミズキ今年も咲いて薄緑満開となり庭が明るし(福田時子)
標的の旗を大きく球は逸れグランドゴルフの点数嵩む(河野かなゑ)
ひさびさに着物を出して手に取れば当時のことがつぎつぎ湧いてくる(丸山節子)
ケキョケキョと幼声に鳴いているウグイスの声を聞きつつ草引く(小原千津子)
捨てる前ひと手間かけてゴムを抜きよみがえったよ私のスカート(山田テル子)
本将棋教えて呉れた人に勝ち初めての事と喜びてをり(佐野きく子)