三  月  例  会  (第五百四十七回)
           (平成二十八年三月十日)

雨垂れのポタポタポタと垂るる軒風を呼んだか音色変われり(長瀬武司)

生ゴミを出そうと庭に出た時に水仙の花が「おはよう」と言う(小椋勝宏)

結婚の気配なき孫四人いてこの先日本はどうなるのだろう(鈴木芙美子)

食べ物を数えて噛む癖をつけようと十から二十だんだん増やす(川島綾子)

朝早く和紙漉く音を競り合った故郷美濃は過疎になりたり(古田司馬男)

収賄の事実を語る甘利さんドラマの場面を想い浮かべり(鈴木寿美子)

眼帯をはずしてまずは確認す左目に住みし虫は去りたり(鈴木光男)

二週間寝返り出来ず餅まきの人のうねりに脇腹痛めて(井上秀夫)

何億光年の一瞬なれど生ききたる八十年は長しと思う(河野かなゑ)

「矜持あり」と涙ながらに述べし男収賄の罪がすべてを語る(横山 稔)

イヌフグり、ナズナ、タンポポ咲き競い年甲斐もなく心うきたつ(大西富士夫)

逝きし息子が現われ母と語るのを羨しと思う映画を見つつ(安田武子)

老の身になかなか来ない暖かさ待ち遠しいよ春の日和が(福田時子)

ふきのとう程よいにがみ思い出し庭を探せどひとつもあらず(丸山節子)

久々に映画を見たり同郷と思えば親し杉原千畝(小原千津子)

雄総堤の傍へに住みいる友と来て夕陽のさせる川を見ており(佐野きく子)

緊張の父と腕くみ一歩づつ孫進みゆくバージンロードを(久野高子)