子の短気諭しておればそばに来て妻が言いたりあなたにそっくり(古田司馬男)
ガラポンで湯たんぽ当り喜ぶも束の間孫に持って行かれる(井上秀夫)
十二月十一日の七時半玄関出ずれば熱き風吹く(横山 稔)
庭先のサルビア赤く生き生きと霜降るまでの命繋ぐ(川島綾子)
中流と思いていしがこの頃は下流老人となりゆくわたし(鈴木芙美子)
力萎え小回りきかぬ年の暮己を反省再起にかける(大西富士夫)
名産展名古屋の街で味わうは大間鮪の塩漬けという(長瀬武司)
満開の山茶花散らす強い風安保特秘と嵐の予感(安田武子)
若人に望みをたくすほかになし独裁化する新年を迎えて(鈴木寿美子)
「おち葉炊き」の歌を流して車来る暖かな冬ストーブ焚かぬ(丸山節子)
ピラカンサ垣根にそって赤い実も色があせゆき寒さを告げる(福田時子)
「安」の文字太く大きく書かれたり不安ばかりの独り居の我(久野高子)
今年また減らしし賀状ようやくに独りの暮らしに慣れたと添える(小原千津子)
老四人北方街道雪景色家族に勝る親切受けて(佐野きく子)