十  二  月  例  会  (第五百四十四回)
           (平成二十七年十二月十日)

トラックの助手席に乗るわが妻はワンちゃんのごと外を見ている(井上秀夫)

SL(エスエル)の車窓に拡がる大井川鼻つく煤煙青春かえる(大西富士夫)

貼り薬貼りたいところに手は行かず誰か助人欲しくなる夜(川島綾子)

病院の待合室で高齢者右も左も杖がたより(福田時子)

忘れもの取ってくるまで待っているわが七階のエレベーターよ(鈴木芙美子)

首長はミスを認めて謝罪する地震予測は指揮者魂(長瀬武司)(脇原貞子)

報復はまた報復を産むのみぞ今こそ「言葉」を心温める(横山 稔)

枯葉舞うお寺のベンチにお年寄り「テロは許さぬ」と言葉広がる(安田武子)

卓上の柿の色見て泛べをり屋根より採りし古里の柿(佐野きく子)

シルバーカー買ってもらって半年余いまだ廊下においたままなり(丸山節子)

鬼婆が尻餅ついて痛いと言う我は見ぬ振りおかしさを噛む(古田司馬男)

せかせかと歩きし母の足音のおりおり聞ゆ夕べのしじま(小原千津子)

隣屋にはためくTシャツ年毎に大きくなりてわれを見下ろす(河野かなゑ)

「一億総活躍」われも一億の一人なり認知予防をしきり聞き入る(久野高子)

この辺で解散しようかいやまだと来年は岐阜に再会約す(鈴木寿美子)