八  月  例  会  (第五百四十回)
           (平成二十七年八月十三日)

知らぬ間に軍国少女になっていた長女の私は竹槍持ちて(鈴木芙美子)

海亀の卵を食べる猪の狩りのこころ映像に知る(長瀬武司)

嫁ぎし頃持ち来し紫陽花咲きこぼれルーツ辿れば郡上のお寺(川島綾子)

今日行くと今日用あれば認知症寄りつきもせず逃げ出してゆく(古田司馬男)

雨の日の黄色い傘のみだれ咲きほほえましかり ぬれないように(脇原貞子)

図鑑でしか見たことのないモウセンゴケ群生を見る夜叉の岩場(大西富士夫)

朴の木の枝に一匹靑蛙指をふれても逃げては行かず(福田時子)

五十二才おじいちゃんだねと語り合う四年前逝きし吾子の写し絵(安田武子)

娘の家の中日新聞持ち出して沖縄の記事読み比べてゐる(鈴木寿美子)

「安保法案」強行採決のテレビ見るこれはフィクションドラマでありたい(久野高子)

あちこちに大型店の増える中買物難民我等に得なし(河野かなゑ)

「存立の危機!」と首相がつぶやいて日本からミサイルが発射される日(井上秀夫)

七月になると思わる逝きし子に月日たちても会いたさ変わらず(丸山節子)

藁ぞうり下駄履き通学せし戦時語らう友も少なくなりぬ(小原千津子)

七夕の短冊を書き茄子の馬作りくれたる父偲びをり(佐野きく子)

行くところ一言一句が左右するその責め知るべし談話を出す主(横山 稔)