九  月  例  会  (第五百二十九回)
        (平成二十六年九月十一日)

除いても顔を出したるどくだみの花妖しげに白く笑えり(鈴木寿美子)

要支援要介護の波ひたひたとわれら二人の足元に寄す(河野かなゑ)

白飯(しろめし)の申告拒んだ疎開生叱った教師の白飯を見て(横山 稔)

「ヨガ」が効き腰痛この頃癒えている両膝抱え左右へゴロンゴロン(古田司馬男)

キリシタンの棲みたる村に並び立つ墓石の裏に十字架くすむ(長瀬武司)

焼け跡を泣き泣き帰りし敗戦の日今も忘れず十三歳の夏(鈴木芙美子)

その昔アプレゲールと蔑(さげ)すまれ今はアナログ馴染めぬデジタル(大西富士夫)

子の友は必ずお盆に詣りくる二十三回忌の今年の盆も(丸山節子)

「聞くなかれ」「語るなかれ」という掟諾えるなり湯殿に入れば(湯殿山)(井上秀夫)

点描に浮びし吾の顔若々し皺が足りぬと夫が笑う(安田武子)

さわやかなピンクに咲きし百日紅花ありなしの風にしずかにゆらぐ(福田時子)

独り居に漸く少し慣れ来しに鋭き雷鳴 思わず声あぐ(小原千津子)

岐阜地方集中豪雨のその前に墓参叶ひて安堵してをり(佐野きく子)

蝉しぐれ汗をぬぐいつ墓参り虫の鳴く音に小さき秋知る (久野高子)