妊娠し出産をして子育てもするシングルマザーをおのこやわかるか(横山 稔)
伊豆を行く車窓より見る港町大きな津波を思ひ浮かべる(鈴木寿美子)
加齢臭嫌われているこの頃は風呂の勧めと着替えの勧め(古田司馬男)
渾身の意気込めうなる河内ぶし中村美律子に負けるものかと(井上秀夫)
経を読む僧も替わりぬ墓友も息子に変わりて施餓鬼法要(鈴木芙美子)
里芋の成長遅く小さくて球のしづくで願いは書けず(丸山節子)
夜叉ヶ池周りを囲む木に白く花と見紛うモリアオガエルの泡(大西富士夫)
紅の地に花咲く手提げ台湾の修学旅行の土産嬉しい(安田武子)
早朝の露に濡れいる半化粧花寂しげに頭をさげて(福田時子)
夜の更けてわが家に黄金虫(こがね)飛び来たりぐるぐるぐると電灯めぐる(佐野きく子)
三姫会と名付けて語らう月一度六十年を隣り住む友と(小原千津子)
茗荷にも早稲と奥手があるという今朝の薬味は奥手の茗荷(長瀬武司)
血を流し泣きわめきいる幼な子を見るにたえ得ず水飲みに立つ(イスラエル・ガザ地区の争い)(久野高子)