むらさきの花弁をびっしり縫い合わせまんまるボールとなりたる紫陽花(井上秀夫)
ユリ・センダン・ナンジャモンジャにヤマボウシ・ハンカチの木も咲く樹々のたしかさ(横山 稔)
君が代の高校生のコーラスが暫し引き込む岐阜国体へ(長瀬武司)
信長の自筆の手紙見つかりて熱田神宮にも天下布武示す(古田司馬男)
持ちてこしコーヒーケーキ目の前に孫夢中なりスマホが憎し(安田武子)
初なりの胡瓜一本手に取りて やっぱり畠は少し続けよう(丸山節子)
山腹を霧かけのぼり峰隠す束の間の晴約束をして(大西富士夫)
失うもの多しと思う八十路われスーパーで出逢う知人減りゆく(小原千津子)
「ドログバ」の名も覚えたりサッカーを見る楽しみの増えし老の日(鈴木芙美子)
仏壇に無事を願いて手を合わすこの平穏は? 「集団的自衛権」(久野高子)
ひるがおの花が今年もやさしく咲きさわやかな風にゆれている(福田時子)
草引きの後の一服熟したるブルーベリーを口にほほばる(佐野きく子)
思い出をしゃべり合いつつ次々と母の箪笥を空にしてゆく(鈴木寿美子)