六  月  例  会  (第五百二十六回)
        (平成二十六年六月十二日)

家中がめったに揃わぬ子の家族スマホを持ちて集う母の日(鈴木芙美子)

ホテルでもたたみの部屋に椅子置いて乾杯となり宴はじまる(古田司馬男)

玄関の隅から佳き香を漂わすアメリカジャスミンの紫の花(井上秀夫)

二敗して土壇場凌いだ平野さんたましい見たり技の背後に(横山 稔)

今年も小さく白く香りよく庭のみかんが花咲かせたり(福田時子)

目を皿に鼻も利かせて探したりこんな所にスイカズラ咲く(大西富士夫)

八十で失楽園の作者逝き赤い蹴出しが夏風に舞う(長瀬武司)

揺れる藻に葉桜重なる水門川芭蕉の句碑を読みつつ回る(安田武子)

鶯はわが庭先にふた声を残しいづこへ飛び立ち行ける(佐野きく子)

かきつばた水辺にありて公園の憩うベンチに木漏れ日まろし(河野かなゑ)

庭に住む小さき蛙突然に大声で鳴く 今夜は雨か(丸山節子)

いつものごと牡丹の鉢植え娘より来ぬわれはビールをふたケース送る(久野高子)

兄義姉も亡く遠ざかるふる里は私鉄も消えて訪う術もなし (小原千津子)

たまさかに見る鯉幟ひらひらと屋根より低くやさしく泳ぐ (鈴木寿美子)