日中の諍い報ずるテレビを切るわが解やあるいくさ回避の (横山 稔)
添い寝して昔話をしてくれし母が記憶の遠くより来る (河野かなゑ)
山茶花の紅いろの花に春の雪雪の白さに冴え冴えと見ゆ (福田時子)
国守る一途で散った若者を心に拝む靖国神社 (古田司馬男)
参拝の長い五分をパトカーが車の後ろで待っていてくれた (井上秀夫)
大寒のわが玄関にカマドウマよくもまあ生きていたりしものよ (佐野きく子)
山峡にこきりこ節で人集めライトアップに浮かぶ五箇山 (大西富士夫)
釣り人と間を置く鷺も川面見る春の岸辺で微動だにせず (長瀬武司)
遅ればせながら蕾をのぞかせた蘭よ、遺愛の鉢の一つに (出町昭子)
年老いて夫といても寂しいと幼なじみの電話の長し (鈴木芙美子)
スキージャンプの葛西選手の目に涙こみあげてくる熱きものあり(丸山節子)
エコキュートの故障を告げるピーピーピー鳴る音はやさしけれども不気味(鈴木寿美子)
大島の記念に求めし寒椿つぎつぎ開くわが誕生日 (久野高子)
ほつほつと咲き初めし梅この梅の伐られて介護施設建つとう (小原千津子)