九  月  例  会  (第五百十七回)
    (平成二十五年九月 十二日)

底知れぬ解放感に満たされて町中が湧きし憲法発布の日(鈴木寿美子)

右に切るハンドル怖い新政権それでも乗るのか自民の車に(河野かなゑ)

宴会の最後を〆る河内節オバチャンたちが皆踊りだす(井上秀夫)

花火もう終っちゃうよと呼びにくる夫を断り音を聞くのみ(出町昭子)

石拾う動作を見せればいち早くアホーアホーとカラスが逃げる(古田司馬男)

黙とうの高校野球の甲子園戦争放棄が受け継がれゆく(長瀬武司)

こらえずに溢るる涙は出し給え一途で美し敗者の涙は(横山稔)

ようやくに盆僧帰り冷蔵庫にひとつ残れるアイスクリーム食べる(鈴木芙美子)

鳴いていい生命短し蝉の声立秋の来て吾子三回忌(安田武子)

エアコンの二十八度を消して立ち窓を開ければ朝風涼し(福田時子)

我れ生きる八十路半ばを妻笑うよどを拭えるしぐさを真似て(梅村成佳)

娘らのふる里帰りは今年もなく盆の読経すひとり座りて(久野高子)

三十五度続けば散歩は日暮れ時か細き月の日々太りゆく(小原千津子)

庭先へこおろぎやっと秋運ぶ連続記録の猛暑日越えて(大西富士夫)

わが猫と戯れ帰りし幼児はネコネコと言ひせがみゐるとぞ(佐野きく子)