八月例会(第五百十六回)
    (平成二十五年八月 八日)

息つめてこぶし握りて日韓戦許し難きはハングルの垂れ幕(横山 稔)

新調のシャツ着ていそいそ出かけ行く七夕の夜の親睦会へ(井上秀夫)

そば打ちの名人囲み和やかに老人会でそばを味わう (古田司馬男)

夫と子の手を借り梅干しうら返す三百粒のひと粒ひと粒(出町昭子)

過ぎ去りし夏の想いのその中に蝉しぐれして少女の私 (鈴木芙美子)

電柱の斜めに延びる影に沿い斜めに歩むはみ出ぬように(丸山節子)

毎日の暑さに足腰かったるく身体は思う様に動かず(福田時子)

野葡萄を落ち逃げてゆく黄金虫葉を食い荒らす仕業に生きる(梅村成佳)

大きな手小さな手をとり「なんなんなー」木陰の散歩遠き日懐かし (安田武子)

母のよく言いいし言葉「齢には叶わぬ」なる程と思う私のこの頃 (小原千津子)

あの二階にまだ母の居る気配する施設の前を通りゆく時(鈴木寿美子)

最後かも知れない夫との北の旅宗谷岬の碑の前に佇つ(河野かなゑ)

外遊びに行きたる猫の雷鳴に急ぎ帰りて神妙にをり (佐野きく子)

朝焼けの伊吹が西にそびえ立つ広がるふもと靄に包んで (大西富士夫)

ひさびさに昼訪ね来しここ陶の街にうなぎの匂いただよう(長瀬武司)

跳ぶように階駆け上がる若者の風圧によろめき しばしうずくまる (久野高子)