七月例会(第五百十五回)
    (平成二十五年七月 十一日)

幼きは幼きどうしのおしゃべりに声かけし我気づかれもせず(横山 稔)

三十一人の孫子に送られ逝きし母 父は孫抱く事もなかりし(鈴木寿美子) 

かぜ引いたと大きマスクで来たる子の大口あけてお握り頬ばる(出町昭子)

店に入り腹を満たせば何処からかホトトギス鳴く「ヨくクウキャクダ」(井上秀夫)

寝床まで蚊取り線香焚かれては私がいぶされ寝付けず困る(古田司馬男)

二週間すぎても落ちぬ爪の染み梅の実染まる紅鮮やかに(安田武子)

空梅雨のむし暑さには疲れたれ昨日と今日の雨でひと息(福田時子)

梅雨時のわが庭先はみどり濃し花とあらくさ共に繁りて(佐野きく子)

長寿国アベノミクスに無視されて老々介護の不安高まる(鈴木芙美子)

夏の朝煮え湯へ蜆投げ込めばふっくらとした顔を出したり(長瀬武司)

孫からの東京見物の誘いあれど返事に迷う膝の痛みに(久野高子)

お茶の会不慣れな我はぎこちなく紫陽花という菓子をいただく(河野かなゑ)

両膝に抱きし日もある孫二人母となりたり子を抱きて来る(小原千津子)

叱るときは厳しく叱る母でした兄が夕食を外されしことありき(梅村成佳)

香りよき信州味噌つけ胡瓜食む遠い昔の古里の日々(丸山節子)

植え終えた田圃青々帯となり遠くの山を水面に浮かべ(大西富士夫)