幼きは幼きどうしのおしゃべりに声かけし我気づかれもせず(横山 稔)
三十一人の孫子に送られ逝きし母 父は孫抱く事もなかりし(鈴木寿美子)
かぜ引いたと大きマスクで来たる子の大口あけてお握り頬ばる(出町昭子)
店に入り腹を満たせば何処からかホトトギス鳴く「ヨくクウキャクダ」(井上秀夫)
寝床まで蚊取り線香焚かれては私がいぶされ寝付けず困る(古田司馬男)
二週間すぎても落ちぬ爪の染み梅の実染まる紅鮮やかに(安田武子)
空梅雨のむし暑さには疲れたれ昨日と今日の雨でひと息(福田時子)
梅雨時のわが庭先はみどり濃し花とあらくさ共に繁りて(佐野きく子)
長寿国アベノミクスに無視されて老々介護の不安高まる(鈴木芙美子)
夏の朝煮え湯へ蜆投げ込めばふっくらとした顔を出したり(長瀬武司)
孫からの東京見物の誘いあれど返事に迷う膝の痛みに(久野高子)
お茶の会不慣れな我はぎこちなく紫陽花という菓子をいただく(河野かなゑ)
両膝に抱きし日もある孫二人母となりたり子を抱きて来る(小原千津子)
叱るときは厳しく叱る母でした兄が夕食を外されしことありき(梅村成佳)
香りよき信州味噌つけ胡瓜食む遠い昔の古里の日々(丸山節子)