六月例会(第五百十四回)
    (平成二十五年六月 十三日)

乾杯は簡潔にして要が良しいつまでつづくこの挨拶は(横山 稔)

運勢は「予想外の金運」とか三枚多く宝くじ買う(古田司馬男)

老いていまオセロゲームに夢中なり相手見付けて楽しむわれは(佐野きく子)

小鳥二羽金魚二匹の世話遺し突然に弟は逝きてしまえり(鈴木芙美子)

青い腹見せて舞い立ち救助ヘリ雪の稜線越して消えゆく(大西富士夫)

体験談聞き入る生徒に伝わるや迫る火のなか必死に逃げしを(安田武子)

手洗いの造花に触れて見る鏡口腔癌の顔の傾き(梅村成佳)

祭壇の長男の前にうつむいて無言で座る義兄の後姿(うしろで)(鈴木寿美子)

来年も元気で居たいと願いつゝひとつばたごの花を見上ぐる(河野かなゑ)

椎の花仰いで昔思い出す実を焼きくれしたらちねの母(長瀬武司)

一面の姫金魚草風に揺る休耕田に誰が蒔きくれし(出町昭子)

母の日に孫よりとどくプレゼント思い思いの愛らしき花(福田時子)

いつものごとカーネーションが届きましたメールでお礼 返信もメール (久野高子)

仏だんは小さく変り井戸は埋め屋敷の眞ん中に洋風の家(ふる里)(後藤清子)

少しづつほんの少しづつ痛みとれ山の緑も濃くなってゆく(丸山節子)

アッシーを失いてより一年半漸く歩きの暮しに慣れぬ(小原千津子)

蛇あまたのた打つごとき杉の根を跨ぎて登る奥之院まで(井上秀夫)