五月例会(第五百十三回)
    (平成二十五年五月 九日)

採りたての蕗のうぶ毛のやわらかさやさしきものが春の野に満つ(出町昭子)

太陽光発電ブーム到来かどこの屋根にもパネルが目につく(古田司馬男)

師の歌集を夫は先に抱えこみ床の中にて読み返しをり(鈴木寿美子)

年末に妹のくれしシクラメン赫々と咲く桜散る今日(鈴木芙美子)

子に譲るために建てたるこの家も雑草繁る廃家となるか(河野かなゑ)

ボストンに娘家族が住みおれば他人事には思えないテロ(長瀬武司)

雑談にワサビ効かして効き目見ればだんまりの友はジョーク放てり(横山 稔)

かぶら持ち株価上がれのパフォーマンスわれ持つ株はマイナス多し(久野高子)

自転車の通学生に声かける「気をつけてね」に「おっす」と返事 (安田武子)

外つ国の旅人の踏む石畳妻籠へ続く馬籠の山道(大西富士夫)

庭先の著莪に満天星きんせんか佛花に困らぬ季節となれり(佐野きく子)

賜わりし春一番のたらの芽を食べる夕餉を楽しみて待つ(丸山節子)

八十才すぎの身だしなみ美容院へ行くのにも私はタクシー(福田時子)

ひそやかな雨音に夜半耳澄ますお湿り欲しいと畑が待ってる(小原千津子)

襷した剣舞の若き日の写真米寿を生きてしみじみと見る(梅村成佳)

柴又の駅で降りれば寅さんが帝釈天へ案内をする(井上秀夫)

来年のさくら見ること出来ぬかも今日は二回目花の下かげ(後藤清子)