出産に入学ふたりお見舞いと四月なかなか忙しきかな(後藤清子)
大相撲モンゴル魂に負けている大和魂で横綱をはれ(古田司馬男)
ロボットはもっと上手に歩くかも往来見定め杖つき歩く(出町昭子)
エドヒガン鮎告げ桜の咲き初めぬ彼岸を過ぎたる今咲き初めぬ(横山 稔)
ためらわず優先席に座りたり高齢者パス使うに慣れて(鈴木芙美子)
目の冴えて眠れぬままに思い出す陽炎を覚えし野外授業を(鈴木寿美子)
不戦の杜のさくら花びらゆっくりと渦を描いて池の面に散る(井上秀夫)
気の毒な名前つけられ此の花は春を呼びこむオオイヌノフグリ(大西富士夫)
花冷えに急いで一枚羽織る朝臆することなく咲き誇る梅(安田武子)
生きる為だけに生きこし八十年 振り返り見るも足跡もなし(河野かなゑ)
今年は枝いっぱいにとさみずき黄色い花がハラハラと散る(福田時子)
週三日通ふ施設に友の増えオセロ、入浴たのしみ数多(佐野きく子)
レジの人逢いたい人に似てるから少し混んでもこの列に並ぼう(小原千津子)
上りきてスカイツリーの揺れを知る老いたる妻と顔を見合す(梅村成佳)
冬中は炬燵の守で過したり庭の草々真面目にのびる(丸山節子)
小さきは丸ごと鍋へ放り込み母の真似して里芋を煮る(長瀬武司)