よっこらしょ よっこらしょと出してきたストーブしまうひな祭りの日(後藤清子)
寒椿赤きつぼみを開きおりかじかむ手さすり帰り来たれば(出町昭子)
雪の朝裏山一面きらめけりなんじゃもんじゃの花のごとくに(鈴木寿美子)
学校の時計塔止まりて四週間治さぬ訳をあれこれ思う(横山 稔)
妻君が「しげ吉」のウナ丼食べたいと今日はその日なり超おいしかった(古田司馬男)
陽の匂いふくむ布団にくるまりて明日の事は考えず寝ん(河野かなゑ)
乗りのいい曲に合わせてマイケルのムーンウォークのステップ踏む孫(井上秀夫)
親分の新五のように生きようと捕物帳のテレビに見入る(長瀬武司)
テレビ見て思わずニッコリする私幼顔したジャンプの少女に(鈴木芙美子)
早春を探し求めて百々ヶ峯元気印の老があふれる(大西富士夫)
若きらの作るハイカラ料理より水菜の煮びたしうまさかくべつ(丸山節子)
三度目のふる里の会楽しみにしていたる友突然に逝く(梅村成佳)
斬新な「abさんご」に目が泳ぐ掴み味わうこと出来ぬああー(安田武子)
内裏様四十年経っても変わりなく雛飾るわれは年々に老ゆ(福田時子)
ミシン踏む事少しあり小さき畑守りて独りの八十路を生きる(小原千津子)
四十日留守せしわれにすり寄りて離れずに居る家猫クウマ(佐野きく子)