一月例会(第五百九回)
   (平成二十五年一月十日)

鮮鉄の友の書きたる年賀状この一枚が青春つなぐ(梅村成佳)

杖突いて渡るスクランブルの交差点痩せても腕に依りて安けし(出町昭子)

喜寿祝い焼肉店のフルコース孫に囲まれ写真に写る(古田司馬男)

姫りんご孫のごとくに小粒でも色と形は一人前なり(井上秀夫)

この宵も十三粒のくすり呑み明日の命を予約している(後藤清子)

衰えし我等二人ははたと気付く六億円は使いきれない(鈴木寿美子)

広告の意味わからぬと妻に問ふ妻もわからず朝刊しまふ(横山 稔)

明け方の黒野の山にこだまして命を救うヘリが降りたつ(大西富士夫)

長兄が素足で過ごせし幼き日思い出ずれば小雪舞い散る(長瀬武司)

年賀状出さぬ人より賀状来て減らすはずなる賀状が減らず(鈴木芙美子)

七十代最後の新春迎えたり朝日背にうけ薄く紅ひく(安田武子)

近隣の国のリーダー変りたり来る年平和に穏やかなれよ(丸山節子)

雨晴れて日陰に残る黒い雪汚染せし土壌消えることなし(久野高子)

健脚を誇りたる日を浮べつつ萎へたる足を冬陽にさらす(佐野きく子)

冬の陽の温くとき部屋にアルバムを開きてひととき遠き日に返る(小原千津子)

新しき年の始めに祈ること景気快復家族の健康(加藤朝美)

長くなる病をもてどすがすがしき医師と出合いしことをよろこぶ(福田時子)

満員の電車に座せる若者らシルバーシートに寝たふりをして(河野かなゑ)