白と黒混じりてグレーに変わりたり維新の会の魅力うすれる(井上秀夫)
貴船川きらめく夕日に紅葉のせ吾が立つ影を清かに流る(安田武子)
干柿を吊しいて思う柿の皮切らずに長く剥きたりし母(河野かなゑ)
けなげにも身よじるがに蠢くはわが動脈ぞモニターに観入る(横山 稔)
干し柿を剥く手のだるさ思ひだす子供のときと同じだるさを(梅村成佳)
この人もあの人さえも亡くなりて淋しい秋がなおさら淋しい(後藤清子)
新装の東京駅の夕間暮れ鳶がふわっと中空に舞う(長瀬武司)
金華山に低空飛行機の音ひびき頭に浮かぶ沖縄のオスプレイ(鈴木芙美子)
鳥羽川の川面に今朝もさ霧立つ冬を迎えて静寂のまま(大西富士夫)
かまきりは茶色になってのろのろと耕す先行く早く逃げろよ(丸山節子)
入苑の吉田さんの持ち歌は軍歌「戦友」哀切滲む(古田司馬男)
自転車で遠くへ行けたは過去の事きょうはトイレの掃除がやれた(出町昭子)
吟行で訪ねし日あり徳山村水を湛えし湖底に沈む(小原千津子)
ミニ政党多く出来すぎ我々は党首党名覚えきれざり(加藤朝美)
飛ぶごとく月日流れて十二月掃除日多く余白に書き込む(久野高子)
冬の使者をしどり渡り来たるとぞ夫とよく行きしかの松尾池(佐野きく子)
今年は蜜柑の花が咲き実を楽しみにしていたらやっと一つ(福田時子)