和服着て外人カップル散策すあかりアートのうだつの街を(河野かなゑ)
酔う程に蛮声あげて唄いだす校歌に軍歌 老いたる昭和(大西富士夫)
秋じゃがの植え付け時期を誤りぬ続いた猛暑の急に秋めき(横山 稔)
間仕切を明けて眠りし薄やみに夕べ手折りし銀木犀の香(鈴木芙美子)
余生とは退屈だよと背が語る川面に釣り糸垂れている人(長瀬武司)
国体も大成功に閉幕し清流長良で世界新出る(加藤朝美)
冷や酒が秋刀魚にさそわれ温く酒にゆっくりゆるり虫の音とおのく(安田武子)
窓あけて眠れば夜中に目が覚めぬまあるい月に顔を覗かれ(井上秀夫)
前向きに生きんと常に思いつつ季節はいつか秋紅葉に(福田時子)
ママショップ地域の店と銘うってオープン三年シャッター閉ざす(古田司馬男)
タックルを幼なごころがくり返す女子レスリング吉田の努力(梅村成佳)
延命治療受けぬつもりがゆらぎ初む不調の箇所が楽になるなら(出町昭子)
一周忌終えてほっと安らぎぬ仏事の事は一年生のわれ(小原千津子)
可哀想にごめんごめんと言いながら花にたっぷり水呑ませたり(後藤清子)
解散をするのしないの騒ぎいる選挙も近いか暮れも近づく(久野高子)
お迎えする皇太子様お一人で笑顔の中に淋しさ偲ぶ(丸山節子)
入院のひと月の間に秋明菊ことしの蕾咲かず枯れたり(佐野きく子)