九  月  例  会(第五百五回)
  (平成二十四年九月十三日)

古里の幼友達亡くなりし電話のありぬカナカナの鳴く(丸山節子)

独り居の兄に妹が聞いている延命治療をどうしますかと(古田司馬男)

草むしりノウゼンカズラの燃える花見ればよけいに汗が出てくる(井上秀夫)

風の盆のうちわ出てきて思い出す夜更けの町の哀しき笛の音(後藤清子)

つながらぬナショナリズムもよめぬまま旗持ち走る「鍾佑」の軽さよ(横山 稔)

人は老い蝉鳴きしきる原爆忌テレビの前に黙祷をする(鈴木芙美子)

感動の幕引き終えた甲子園王国きずいた栄光いずこ(大西富士夫)

四季咲きの赤い薔薇のつぎつぎに咲いて小花が匂いをはこぶ(福田時子)

鷺草の蕾ふくらむ我が庭にしらさぎの飛ぶ如くに咲けよ(佐野きく子)

母の名の消えたる墓標に花の在り守りてくれる独り居の義姉(河野かなゑ)

夏の日の水遣りしているかたわらで固いアケビが肌に触れたり(梅村成佳)

山畑は原野にもどる作物はけものに荒らされ作り手もなく(加藤朝美)

二歳児はわが家に来れば先ずチンとリンをならして数珠をつまぐる(小原千津子)

心肺を鍛えて五輪に臨むあり我もしっかりリハビリに勤めん(出町昭子)

ままならぬ重い肩の荷いつまでか拾う神より自然死思う(久野高子)

大輪の花を咲かせて燃え上がる二百余国の聖火集いて(鈴木寿美子)

蒼い波きらりきらきら壱岐の海目を細め追う雲丹とる海女を(安田武子)