七  月  例  会(第五百三回)
(平成二十四年七月十二日)

水やりはしばらくこれで解放か雨音聞きて安堵の眠り(丸山節子)

ほぐれつつバラの花びら色変わる挿し木より育て見頃を迎えて(出町昭子)

遠い眼医者の帰りに死んだ老人たちは放射能のせいと私は言いたい(鈴木芙美子)

チロリアンランプの赤きが揺れているお店で待てり君の来るのを(井上秀夫)

一面にさくら花びら散り敷きて踏むをためらいとびとび歩む(後藤清子)

飲む食べる健康ブームの宣伝戦チラシとテレビでああ姦しい(古田司馬男)

原発反対のデモ映像に甦へる昔歌ひし「原爆を許すまじ」(鈴木寿美子)

幼き日兄と捕えしあのドンコいま水族館で我を睨めり(河野かなゑ)

父さんのおひげの顔が笑ってるピカソも顔負け幼なの力作(安田武子)

百五年あとに見られる天体ショウ見るのは玄孫(やしゃご)かそのまた孫か(大西富士夫)

片栗の花の咲く日の通りみち車前草(おおばこ)の葉の匙うつぶせに(梅村成佳)

洗濯物パチンと伸ばして干し終えぬきょうのひと日は青空であれ(福田時子)

帰り来て告げたき事のいくつかを遺影に語る半ときのほど(小原千津子)

夕闇にホタルが早苗田乱舞せし幼き頃の夏想い出す(加藤朝美)

突然に荷台動きて棚に積む人気(ひとけ)も見えず「マジックみたい」(久野高子)

庭先のあじさゐの枝活着を信じて施設の庭に挿し木す(佐野きく子)

宝くじの当りが此処から出たという幟招けど見て通り過ぐ(長瀬武司)

フリーキック放たんとする今まさに終了の笛何たることぞ(横山 稔)