六   月   例   会   (第五百二回)
    (平成二十四年六月十四日)

花筏後から来ると触れてゆくひとひらふたひら花びら流れ(長瀬武司)

落雷がなければよいがと夜勤した給油所のこと雷雨に思う(古田司馬男)

ピラルクーのただにわびしき虚ろな眼アマゾン泳ぎし頃忘れしか(横山 稔)

ボケの花ま白き中にくれないの花がお出でと手招きしてる(井上秀夫)

新緑の伊吹と池田の山隠し黄砂が濃尾平野をおおう(大西富士夫)

コーヒーを入れ「ケーキたべようよ」と夫がわれ呼ぶ今日は母の日(安田武子)

亡き人と幾たび来しや薬草園今日は歌友と工場めぐる(佐野きく子)

あめんぼの水面蹴りたる身の速さ吟行の日の若竹の会(梅村成佳)

花筏川面ゆらゆら流れ行く茶席の菓銘も花いかだにて(久野高子)

ナイショやよあなたにだけよナイショやよ聞いているわよ赤いさざん花(後藤清子)

土つきし竹の子沢山持つ友とエレベーターでばったり出合う(鈴木芙美子)

瑞々しさ少し下さい楠の新緑に向かいひとりごと言う(小原千津子)

肩の荷を下ろした感じとはこのことか職退きし今若葉風清し(河野かなゑ)

つらなった金の輪になったと大声で老いの二人のしばしときめく(鈴木寿美子)

沢山の蜜柑の花咲き甘い香が部屋まで届く実りがたのしみ(福田時子)

わが胸に抱かれてくれてありがとう曾孫の真莉亜よすくすく育て(加藤朝美)

保育所へ春から行きし二才児は灯明あげればハピバセーユゥチュー(丸山節子)

錠剤を作るもドラム缶運ぶのも人手はいらぬ自動化されて(出町昭子)