三月例会(第五百回)
  (平成二十四年三月八日)

カゼの咳する人が居て警戒をしたが次の日我も咳する(古田司馬男)

水あめの伸びるがごとくなめらかな音を奏でるストラディバリウス(井上秀夫)

着地して一回横転の霰たち次々下りる体操キッズ(出町昭子)

自転車も車もすこやかに出て行きて老の二人の一日始まる(鈴木寿美子)

今は亡き友編みくれしマフラーのブルーを衿にしっかりと巻く(河野かなゑ)

大寒の終りを待って吹雪く空疼く右膝一途に春待つ(大西富士夫)

こんにちは部活の子らと挨拶すその日いち日さわらさらさら(後藤清子)

緑濃く枯れることなく五百回楽しく学ぶ若竹歌会(安田武子)

ボランティアの雪掻きこそが功労と勲章受けし教授が語る(長瀬武司)

寒中にタイム競いて走る子ら猛き息吐きつぎつぎと過ぐ(横山 稔)

飛騨漬けの今年最後の切り漬けを痛む歯思い薄切りにする〈梅村成佳)

六十年先の年金の事よりも除染の事やがれきの処理を(加藤朝美)

若き日に手の届かざりし雨畑のすずりを知人にゆづり安らぐ(佐野きく子)

「おはよう」と声かけくるる高校生冷え増す朝を心ぬくとし(小原千津子)

九人の女ばかりの旅の宿ゲームおしゃべり笑いはつきず(丸山節子)

透析を受け生かさるる家猫と片や餓死する家族のある世(鈴木芙美子)

橋の上マイナス二度とおお寒い雪も乱吹いて今日は立春(久野高子)

暖かい日ざしに裏の梅も咲き香りただよい心がなごむ(福田時子)