一月例会(第四百九十八回)
  (平成二十四年一月十二日)

白内障手術終って天井が一瞬チラリ胸のときめく(梅村成佳)

寝床からすんなり起きれるありがたさ腰の痛みもしばらく無くて(古田司馬男)

うつむいてシルバーカーを押す人を引きとめる吾も杖を突きつつ(出町昭子)

秋天にさそわれ出で来ベンチにて見知らぬ人に会釈している(後藤清子)

舞う枯葉幽かなささやき残しゆく悲しみ遠ざけ新春(はる)と向き合う(安田武子)

三月に金沢へ越す孫たちとつくり笑顔で寿司食べてゐる(長瀬武司)

がんばりし一本松の命終へ伸びし若芽にわが夢託す(鈴木芙美子)

行楽に行きたき気持ちを抑えつつ終日屋根にペンキを塗りぬ(井上秀夫)

寒空に従姉見舞へば白じろと四季ざくら咲く土蔵の前に(佐野きく子)

神風が吹くと信じたあの時代朝のドラマの昭和に見入る(河野かなゑ)

清里のまろやかな牛乳味わえば浅間見ていし人を想えり(横山 稔)

愈々か東濃揺らす昼地震安全中部へ警鐘鳴らす(大西富士夫)

消費税の賛否の喧騒つづく暮れ鏡餅さえ迷いつつ求む(久野高子)

石蕗の花首すっと立ちあげて来るべき冬にたえうる様なり(福田時子)

一才の弟の遺影をそっとおきテレビの漫画を見せている兄(丸山節子)

赤白のポインセチアが乱れ咲く黒砂海岸常夏の島(加藤朝美)

二十余年前に逝きにし母の文字ひらがなでノートに書きたる心経(小原千津子)

新しく親族になりし嫁達を迎へて集ふ新春の一日(鈴木寿美子)