十二月例会(第四百九十七回)
    (平成二十三年十二月八日)

制帽を長年かぶりし義兄なり天国への階段登りつめたか(加藤朝美)

逢いたしと想いつのらせ一人旅念願かない阿修羅像に逢う(鈴木芙美子)

秋空に竜のかたちの雲浮かぶみるみるうちに流れてゆきぬ(久野高子)

山頂の祠の箱にノートありわが登頂の日を懐かしく見る(横山 稔)

六人用の食卓今は広すぎて薬の袋などが置かれる(河野かなゑ)

ワイシャツの袖丈詰める夢を見ぬ一年前に逝きし夫の(佐野きく子)

揖斐源流楢枯れ各地へ拡がって錦繍どころか見る影もなし(大西富士夫)

父逝きて友とも別れし孫二人笑顔にほっとす初登校の日(安田武子)

福島の友が夫婦で岐阜に来て妻同士酒気が合って飲む(長瀬武司)

起きぬけの妻の計りし血圧をメモ書きするなりレシートの裏に(梅村成佳)

コスモスをざくざくざくと切って来て広口ビンにざくっと生ける(後藤清子)

おむつ着用ゼロ達成をしたという老人ホームが表彰受ける(古田司馬男)

フルーツティ味わいながらオーナーと写真に収まる八ヶ岳倶楽部(井上秀夫)

残照の見る間に褪せて暗くなり買い物帰りの杖持ち直す(出町昭子)

妻亡きあとこもりがちなる弟ははるばると来ぬ野球観戦に(丸山節子)

アイロンをかける間の二十分脳が持ち出すあの恥この恥(福田時子)

向い家に明かりつきたりわが裡に十年ぶりの灯りつきたり(小原千津子)

憬れて東京タワーに登りしにスカイツリーとガイドははしゃぐ(鈴木寿美子)