「ハッピー」と叫ぶ気持ちは一つなり関商工のナインと応援団(古田司馬男)
夏の夜は蛍捕りにも行ったっけ友はハウスに三年目と云う(井上まさよ)
鴉から草が守った西瓜畑無精を決めたご褒美として(長瀬武司)
バス停でエレベーターで「暑いね」といえば繋がる私とあなた(鈴木芙美子)
カラオケのみち閉ざされし口腔(くち)の癌刈り干し切り唄ときに口遊む(梅村成佳)
夕立に駆け込むガレージ買物を抱え見て居りはねる雨粒(出町昭子)
折折の宝物なる思ひ出の中に浸らん眠れぬ夜は(鈴木寿美子)
ほたる舞う長良河畔に肩よせて眺めた蛍今は何処に(丸山節子)
お盆には十三人があつまりぬこの日ばかりは節電をせず(後藤清子)
手心を加えて欲しい処暑の風未曾有の記録つくらずともよし(大西富士夫)
お盆には孫らが帰り久々に賑わう夕餉話もはずむ(福田時子)
検査ずみ価格半値の肉を買う無視して行く人数多あれども(久野高子)
長良川とライン河にも散骨と言いし息子は故郷二つ(安田武子)
三階までアパート蔦に被はれぬ管理不足はわれに責めあり(佐野きく子)
毎日が退屈そうなわが夫生き生きさせるてだてはなきか(河野かなゑ)
ご政道ドタバタ怨念切り捨てて泥鰌の君よ挑めよ二つ(横山稔)
夜も更けて何かが襟もと這う気はい払えばいきなり指に咬みつく(井上秀夫)
病窓より重機の動き眼で追へる夫は壮年の日を思へるや(小原千津子)